あなたの会社は大丈夫?女性社員が泣いた「しわ寄せ」の話

残業を断ること、できません。

あるメーカーの東京本社に勤める里奈さん(30歳・仮名)は、福岡支社で産休に入る女性社員の代替要員として転勤を命じられました。

生まれ育った東京を離れ、行ったこともない福岡に転勤することに躊躇いはありましたが、

新卒からずっと勤めてきた会社だし、転職も考えていないため、会社の命令に従って福岡へ転勤しました。

与えられた業務は同じ営業事務ですが、今までと勝手が違う手順に戸惑いを感じながらもなんとかこなしてきました。

その職場は育児と両立する時短勤務社員が多く、

残業ができるフルタイム勤務の里奈さんのところへ仕事がどんどん回ってくるようになりました。

業務が増えるにつれ残業は毎日。疲労は日々積み重なります。

上司には「どうせ暇なんでしょ?仕事してよ」と言われ、残業を断ることもできません。

実は里奈さんには東京で結婚を約束している彼氏がいました。

彼氏には福岡転勤を反対されましたが、自分は結婚しても仕事を続けていきたいからと、

彼氏の反対を押し切って福岡転勤を受け入れたのでした。

福岡に転勤してから2週間に1回は東京へ彼氏に会いにいっていた里奈さんでしたが、

日々の残業の疲労で休日はぐったり。家の中に閉じこもり、家事もできず、

横になってばかりで、東京の彼氏へ会いにいく元気もなくなってしまいました。

そのうち彼氏からの連絡も途絶え、ある日別れを告げられてしまいました。

里奈さんは疲れすぎて悲しい涙を流すことさえ忘れていました。

彼氏のことを考える余裕さえないぐらい、疲労で心が壊れてしまっていたのです。

それでも、頑張る里奈さん。一向に改善されない激務をこなし、相変わらずの日々が続いていました。

福岡支社勤務が1年経ったとき、里奈さんの前任である柏木さん(仮名)が育休から職場復帰してきました。

他の社員から祝福の拍手で迎えられ、上司からは、

「あなたの復帰を待っていましたよ。しばらくは時短勤務ですから、無理はないように頑張ってくださいね」と励まされ、

「ありがとうございます」と喜びいっぱいに柏木さんは声を弾ませて言いました。

里奈さんは「あーあなたが休みの間私がカバーしていたんだけどな……」とむなしい気持ちになりました。

柏木さんは里奈さんの隣の席に着くなりこう言いました。

「私が休みの間ありがとう。里奈さんも早く結婚して子どもを産んだほうがいいわよ。子どもは早いほうが楽なんだから」

「育児しながら働く女性を会社は評価してくれるのよー」

もちろん柏木さんは悪気があって里奈さんに言ったわけではありません。

むしろ里奈さんにもそうなってほしいという気持ちが少なからずあったはずです。

しかし、里奈さんは、柏木さんから引き継いだ仕事だけでなく、

さらに増えた業務量をこなすために毎日残業していることが評価されていないのだということを初めて知ったのでした。

育児と両立している女性社員がそんなにえらいのか……。

今まで頑張った自分はなんだったのだろう……。

里奈さんは東京本社へ戻りたいと上司に申し出ました。

しかし上司からの返答はこうでした。

「柏木さんが時短勤務なので、あなたがいないと仕事が回らないんだよ。だから東京本社に戻すことはできないんだ」

里奈さんは翌日から出勤することができなくなってしまいました。

医師からはうつ病と診断され、病気休職をしばらく取るように指示され、結果的には東京へ戻ることになりました。

里奈さんは、休職から職場復帰することができず、退職を願い出ました。

里奈さんも柏木さんと同じく、結婚して子どもを産んで、育休を取り職場復帰し、ワーキングマザーとして活躍するのが理想でした。

しかし、転勤を断ることでその理想の道が閉ざされることを恐れ、転勤を受け入れたことが、裏目に出る結果になってしまいました。

現代は育児をしながら働くことを称賛する傾向がある一方で、子どもを持たない女性へのしわ寄せが問題となっています。

時短勤務の女性社員が16時になると当たり前のように「保育園にお迎えだから後のお仕事よろしくねー」と颯爽と帰っていく姿を、

羨ましいと思いながら目の前の膨大な業務をこなすことに必死になる女性社員。

会社はそのような女性社員のストレスも配慮しなければなりません。

「ワークライフバランス」は育児や介護をする社員だけに配慮するものであってはならないと思います。

残業するために趣味や、デートを諦めている社員もいます。

就業時間後に自らのキャリアアップのために資格の学校に通っている社員だっています。

このような社員の「ライフ」にも配慮することこそが、「ワークライフバランス」なのではないでしょうか。

もちろん、急な対応で残業をお願いしなければならないときもあるでしょう。

そのような場合には、社員に就業時間後のプライベートの予定を確認し、予定を変更できそうな社員に残業をお願いし、

しっかり労いの言葉を伝えることが大切です。