妻の遺産が減る?子どもがいない老夫婦の相続と遺言書とは。

子どものいない夫婦が考えるべきこと

高橋さん 63歳男性、妻58歳、子どもはいない。戸建て住宅に妻と2人暮らし。(高橋さんの財産:自宅土地建物1500万円、預貯金300万円。不動産、預貯金、共に高橋さん名義)高橋さんは会社員、妻はパートと夫婦で協力した結果、住宅ローンは完済。老後の資金には不安があるが、2年後にもらえる予定の退職金と年金を合わせて老後を過ごす計画である。


高橋さん: 友人に聞いたのですが、今のまま私が死んだら自宅は妻のものにならないかもしれないって本当ですか?

新田: それは家族構成によります。高橋さんはご両親やご兄弟はいらっしゃいますか?

高橋さん: 両親は他界していますが兄弟が2人います。

新田: その場合でしたら、おっしゃる通り自宅を手放す可能性があります。子どものいない夫婦の1人が亡くなった場合、亡くなった方の兄弟も相続人となります法定相続分は兄弟全員で遺産の1/4となります。家などの分けにくいものが遺産の大半といった状況で、兄弟が自己の相続分を請求してきた場合に、相手の相続分にあたる金額が用意できないと、その支払いのために自宅を売却しなくてはなりません


【対策】遺言書

◆相談先「弁護士」「税理士」「司法書士」「行政書士」

「妻に全財産を相続させる」といった内容の遺言書を用意しましょう。兄弟に対して高橋さんの「妻を大切にしたい」といった想いを伝えることができるので、それだけで丸く収まることもあるでしょう。仮に高橋さん亡き後、高橋さんの兄弟が相続分の要求を妻にしてきたとしても、「兄弟には遺いりゅうぶん留分がない」ことを盾として妻を守ることができます。


そして、スムーズに相続手続きを進めるために「遺言執行者」を指定することもお勧めします。通常であれば、相続手続きには相続人全員の署名捺印が必要となります。しかし、遺言書により相続分がなくなった兄弟から署名捺印をもらうのは難しいこともあります。「遺言執行者」は、遺言の執行に必要な全ての行為を行うことができるため、兄弟から署名捺印をもらう必要がありません。


用意する遺言書は、自分の手書きで作成する「自筆証書遺言」でもいいのですが、決められた書き方から外れてしまうと無効な遺言書となってしまいます。いざ相続の場面となった時に、兄弟が納得しない、または本格的に揉めてしまう、といったことが予想される場合は、無効となる可能性が極めて低い「公正証書遺言書」を作成しましょう。(行政書士 新田賢治)

コラム 身元保証団体

子どもがいない、いても頼ることのできない高齢者にとっての悩みの種の1つが、入院や介護施設への入所に当たって必要となる「身元保証人」の問題です。そうした身元保証のニーズに応える団体として、入院・施設入所の際の身元保証人引き受けや医療行為の同意などを行う民間団体(「身元保証団体」と呼ばれることも)があります。団体によって中身はさまざまですが、身元保証、医療行為の同意、入院・通院時の見舞い、同行サービスなどのほか、任意後見契約の締結、死後事務の委任契約(葬儀、遺体・遺品の引き取りなど)を含めることができる場合もあるようです。


身元保証団体は、頼れる親族のいない方にとって魅力的ですが、契約時に多額の預託金が必要であることが多く、契約内容も複雑でトラブルも多く発生しています。現状では監督官庁は存在せず、身元保証団体の登録制や許可制もありません。身元保証人がいないと本当に入院・施設入所ができないのか、本当に身元保証団体の利用が必要なのかなどを十分に吟味し、利用する場合でも、複数の身元保証団体から話を聞く、契約内容をよく確かめ、不要なオプションを付けていないか確認するなど慎重に判断した方が良いでしょう。契約内容については法律文書のプロである弁護士や行政書士へ相談することをお勧めします。

(弁護士 服部一将)