相続で失敗!通帳の保管方法に問題ありで多額の課税。

相続対策をしていたのに、相続税額が多額になってしまった。

私の父は、2年前に死亡しました。固定資産は自宅の土地や建物だけでしたが、預貯金や株などをたくさん持っていました。そのため、父は生前から相続税のことを気にかけていて、相続税の生前対策セミナーなども積極的に参加しておりました。そして、相続税の節税のためにと贈与契約書を作成して、私たち子どもや孫に毎年110万円ずつ私たち名義の口座に現金を振り込んでくれていました


亡くなる少し前に、父が「生前対策もしてきて、かなり自分の財産を子どもや孫に贈与できたから、相続税もかからないと思うので安心だ」と言っていました。父が亡くなり、半年ぐらいたった頃でしょうか、税務署から相続税についてのお尋ねが郵送されてきました。父の相続税はかからないからという言葉を信じ込んでいたので、相続税の申告は必要ないと思い、どこにも相談に行きませんでした


父の死後2年後に税務調査が入った結果、対策に抜けがあり課税対象に…。

その後、自宅の土地建物の登記を済ませ、父名義の通帳や株についての名義変更も終わりました。それから2年たった頃、突然税務署より「お父様の相続についてお尋ねしたいのですが」と調査の電話が入りました。相続税がかからないはずなのに、なぜ税務署が来るのかわかりませんでしたが、税務調査に応じました。


税務署の方が調査に来るなり、父の通帳を5年分見せてほしいと言われ、渡しました。税務署の方が、「5年分の通帳の中で、毎年110万円ずつ振替されているのは、何ですか?」と聞かれましたので、「父が生前対策として私たち子どもや孫に贈与してくれたものです」と伝えました。税務署の方は、「贈与契約書はあるようですね。では、贈与を受けられた方の全員分の通帳も確認させていただきたいのですが。110万円ずつ贈与されているのを確認させてください」と言われ、私たち子ども、孫の分の通帳を持っていきました。


通帳の中身を確認した税務署の方は、「贈与を受けたことは皆さん知っているのですか?」と質問されたので、「はい。贈与契約書を作成する際に、私たち子ども、孫がきちんと署名、捺印していましたし、父より110万円贈与するから、もらってくれるか? と聞かれたので、ありがとうと、もらっていましたが。何か問題がありますか?」と答えると、税務署の方は「では、通帳を管理していたのは、皆さんそれぞれ管理していましたか?


通帳の動きや残高を確認すると毎年110万円ずつ皆さんが贈与を受けられているのはわかりますが、1回も引き出されていませんし、皆さんの残高が同じ金額なのですが……」と言われたので、私は「父は、生前より『わしが生きている間は、この金は自由には使わせん!! 無駄遣いされたら、何のために贈与してやっているかわからんからな!!』と言っていまして、通帳を私たちは見たことありませんでしたので、今通帳の残高がいくらになっているのかもさっぱりわかりません。父が通帳・カード・印鑑については管理していました」


税務署の方が、「これは、名義預金になりますね。お父様の相続財産になってきます。生前に贈与があり、贈与契約書も作成されていますが、贈与でもらっているはずの預金が自由に使えていませんよね。もらったものであれば、もらった方がそれぞれ何に使ったとしても関係ないものではないでしょうか? それなのに、お父様は、『生きているうちは使わせない』と言われているので、その預金を管理・支配していたのは、お父様になります。子どもさん、お孫さんの名義の預金通帳ではあるものの、お父様からの預金を、ただ名義を変更しただけにすぎず、結局はお父様の自身の預金であることに変わりないことになりますね。ですので、相続税の申告も必要となってきますし、相続税も発生します。あなたも無申告となりますので加算税・延滞税などもかかってきますね」


私は、「じゃあ、父は生前対策にとセミナーなどにもたくさん参加していましたし、生前対策として贈与もしてきましたが、それは何の生前対策にもなっていなかったってことですか……?」結局、生前対策として父が10年近く行ってきた私たち子ども、孫の分の贈与全てが、相続財産として相続税の申告に入ることになってしまいました。しかも、相続税の申告が必要ないと思い込んでいたので、申告していなかったことから、相続税の特例は受けられず……申告していれば納めていたはずの相続税より多額の相続税と多額の加算税・延滞税を支払うことになってしまいました。(税理士 磯貝いづみ)