働く意味を持つ方が生産性が上がる!社員を意欲的に働いてもらうには

私たちが働く理由は社会に貢献するためだった。

お金のため? 生活をするにはお金が必要です。アパートを借りるにも、ご飯を食べるにも、子どもの学校にも、旅行にも、パチンコにもお金がかかります。そしてこれらは、なくてはならない(そうでないものもありますが)「必要経費」です。そのため、働いてお金を稼ぐ必要があります。


生活のため、パチンコのためにも岡部君は一生懸命に働きます。一時間働くと千円もらえるので、休日のパチンコ資金のため、今日は、朝九時から昼休みをはさんで夜八時まで十時間働きました。今日の稼ぎは、一万円でした。岡部君の一時間の労働で会社の売上げが二千円だとすると、今日の売上げは二万円です。岡部君の労働で一万円の価値が生まれたことになります。これをカール・マルクスは、剰余価値と呼びました。


そして、経営者は働かずに剰余価値を手にし、岡部君を搾取していると言いました。マルクスが、労働者のためにそんなことを考えていることにはお構いなく、岡部君は明日も明後日も、十時間働きます。先週のパチンコでの負け分も取り返さなくてはなりません。


でも、だんだん疲れがたまってきた岡部君は、作業効率が下がって一時間あたり千五百円の売上げにしかならなくなりました。そうなると、剰余価値は、一日五千円に激減、そのうえ岡部君もついに過労で倒れ、パチンコどころではなくなりました。

社長は、新しい設備を導入して作業を見直し、岡部君の作業効率を向上させることにしました。勤務時間も翌日に疲れが残らないように法律どおり八時間にしました。

これで、売上げ二万円を維持して、岡部君の稼ぎは八千円となります。剰余価値は、一万二千円になりました。岡部君は、パチンコ資金が減ってしまいましたから、社長に直訴します。岡部君の給料は、一時間千円から一日一万円に変わりました。岡部君は、八時間で一万円稼ぐことができてホクホクです。


岡部君の会社だけでなく、他の会社も同じように、八時間で十時間分の給料を稼げるようになったので、会社の売上げは以前に比べてアップしました。さらに、社長は、設備の稼働時間をアップさせて、一日十二時間としました。機械は疲れませんので売上げは、二万四千円です。岡部君も、十二時間働きますが、給料は一日一万円のままです。


会社の受け取る剰余価値は一万四千円。岡部君は、また過労で倒れてしまいます。パチンコはまたお預けです。ここで少し整理しましょう。最初は、岡部君の労働から価値(一日あたり一万円)が生まれました。社長が新しい設備を入れた後は、剰余価値が一万二千円にアップしました。

設備と岡部君の労働が価値を生み出したことになります。この生み出された価値を付加価値といいます。


岡部君の稼ぎの目減りを防ぎ、法律を守ると、設備導入で増加した付加価値が目減りして、もとの一万円になってしまったため、設備の稼働時間を増やさなければ設備の代金を回収できません。稼働時間を延ばすと、また、岡部君はダウンしてしまいました。代わりの従業員を雇うことになれば、一つの設備に二人の従業員が必要になり、一人あたりの付加価値は減ってしまいます(資本の希釈)。


このように働く理由を、お金だけで考えると、相対的に付加価値は頭打ちになってしまうのです。岡部君は、パチンコのために仕事をしていたので、仕事は上司に言われたとおりのことをしていました。設備導入後も言われたとおりで働き方は変わりませんし、会社の売上げに関心はまったくありません。

アイデアや労働の質は、コストのかからない貴重な資産になる。

ここで森田さんに登場してもらうことにしましょう。森田さんは、アイデアマンです。やる気も十分、仕事は自分を成長させてくれると考え、やりがいを感じています。森田さんは、作業方法を工夫して、原材料の原価を下げるなどして八時間の稼働(労働)で、付加価値を一万四千円まで上げることができました。


この差を、全要素生産性といい、森田さんのアイデアや技術革新、労働の質が含まれています。特に、豊富なアイデアや労働の質などは、陳腐化しにくく、持続的な成長をもたらすものといわれています。アイデアや労働の質を生み出す「やりがい」といったものは、労働を「量」で測ったり、「時間」で評価する考え方とは別の発想から生まれるものです。


それは、まったく人間的な営みから生まれるものであり(パチンコではなく)、家族や恋人と過ごす時間と同様に私たちにとって大切なものであり、社会に貢献する重要な営みなのです。


「労務管理」は、単にサービス残業を減らすことではなく、社員一人ひとりが会社の業務を通じて社会に積極的にかかわることによる充足感を視野に入れたものであることが必要なのではないでしょうか。特に、中小企業では、資本、労働について、質・量ともに十分に確保できない現実があることは、残念ながら否定できない事実です。アイデアや労働の質は、コストのかからない貴重な資産になるのです。