生産性を向上させる方法は不要な外的要因を排除すること

成績の上がる組織とはその他に意識をそらせないこと。

働きアリの法則について前述しました。働かない働きアリ(閾値が高いアリ)も組織(=巣)を維持するためには必要な存在であることを学びました。人の世界も同じで、働く人ばかりが働く組織より、普通に働くという人も働きたくなる組織について考えました。経営理念で社員の士気を高めることが必要だということも考えました。後に、労働の質やアイデアの重要性について考えていきます。


しかし、やっぱり、やる気のある(閾値の低い)人もそうでない人も、モリモリ働ける組織と人の関係性があるのが、最も良いということになりますね。では、普通の人もやる気のある人も、もっとやりがいを感じたり、閾値を下げる方向に向かわせるにはどうしたらいいのでしょうか。それは、仕事のやりがいに集中できるように、その他のことに気が散らないようにしてあげるといいですよね。他のことって何でしょう?


「同期の小池君は仕事もできないのに、調子の良さだけで、もう課長なのか、僕はまだ課長代理なのに」「○○商事の案件をまとめたのは、自分なんだけど、ボーナスの査定に反映されない」「△△物産の部長って、無理難題ばかりで、いやになっちゃうよ」「最近、和子さんの元気がないんだけど、話しかけられないし、面倒くさい」「仕事が忙しくて、子どもの運動会にも行けない」など。


これは、あの岡部君の愚痴ではありません。いつも元気でやる気一杯の森田さんが、焼き鳥「大串」で、大学の同窓生と話していたことを、たまたま耳にしたものです。「やる気のある人が、そんなことを考えるわけがないでしょう。だって、いつも前向きな話ばっかりだし、そんな後ろ向きの人間を嫌っているはずだよ」


そのとおりです。でも、人の前向きの考えを良しとするその裏側には、後ろ向きの考えや、お金や他人との比較というどちらかというと後ろ向きの考え方の、価値の判断がつきまとっているのです。お金のことや家族のこと、会社の人間関係、そして上司の評価。そんなことどうでもいいと思う人は素晴らしいと思いますが、そんなに多くはいないと思います(だから素晴らしいのですが)。


そんな人も、(多かれ少なかれというよりは)心の内側では、お金や人間関係、上司の評価について、いつも気になっているのです。人は、社会を物語として考えています。自分の物語の世界を構成するいろいろな要素を糾合して、自分(=自我)が作られていくので、他人のことに無関心でいるわけにはいかないのです。こんなふうに、自分の土台ともいえる基礎的な関係の上に積み重ねられて、自分を作っていますので、土台部分に関心がいっている間は、その結果としてその上に作り上げられる(べき)自分について考える余裕はなくなってしまいます。

仕事に集中できる環境を作るには、不満や改善要望を汲み取り、環境に生かすこと。

自分自身について意識を集中させるためには、土台部分について関心がなくなっていることが重要です。最近どこかの広告会社が、モーレツな仕事ぶりが美徳であるかのような社風のもと、新入社員が過労自殺するという事件がありました。会社のために一生懸命に働くことを良しとすることは間違ってはいませんが、それとは違う価値観との葛藤が常に人の内側では起こっていることを、忘れている? 無視している? 隠していることが問題なのです。


人の心の中に起きるそんな葛藤を素直に認めることが、本当の意味での前向きなこころのエネルギーになっていくのです。リオオリンピックの補欠だった平野美宇選手が、フォアハンドを鍛えたパワー卓球で快進撃しているように。ということで、成績が上がる組織を作るには、

① 組織の人たちが抱える後ろ向きの考えを出し合えるようにすること

② 給料や昇進といった問題に対する不満や要望をくみ取ること

③ 仕事上で抱えている問題や課題を共有し、解決(もしくは、解決策またはヒントを提示) すること

などなど、仕事のやりがいや自分の人生の価値という、高次の価値観以外の問題について、無関心でいられる状況を作り出すことが重要なのです。


もちろん、難しいとは思いますが、具体的な方法は、その人や職場、そのときの状況などによって答えは違ってきます。答えそのものより、そのように意識して社員に接することが大切なことなのです。