子どもの自己表現力を伸ばしたい親に知っておいてほしいこと

子どもの表現は魅力的

ものづくりで生み出される子どもの表現は、いつも感じたまま思いついたまま内面からあふれ出し、とても魅力的です。

「おもしろいかも!」と胸が高鳴り「よしやってみよう!」と心と体をイキイキと躍動させて、

その子にしかできない表現を自発的に生み出していきます。心に感じたまま生まれる表現に年齢は関係ありません。

4歳の子のものづくり活動の中でこんな表現がありました。

絵や造形などしたいことを自由に選べるものづくりの時間に、ある男の子が「お空を描きたい」と、

青色のクレヨンや色鉛筆など思いついたものを手に持って大きな模造紙に向かいました。晴れた日でしたので、

外の空を見てどう描くのかなとその子を見ていると、モチーフの空を見ることなく模造紙にじっと向き合い描き始めました。

空があり、大地があり、木があり、風をイメージしたのか激しくぬりたくった線もあります。


大きな模造紙にはみ出すことを恐れずダイナミックに描き出しました。そして「できた!」と模造紙の数カ所をビリビリと破ったり、

くしゃくしゃと握りつぶしたりしたのです。

なぜこの表現をしたのかしばらくわかりませんでしたが、聞いてみるとその絵は、先日の激しい台風の空を表現したものだったのです。

その絵と表現をじっくり見てみると、大雨が窓を叩くほど降って、ものすごく強い風が吹いて、

木が激しく揺れて、雷も鳴り、その男の子は何か地球自体が動いているどうしようもない恐怖を感じたのかもしれません。

また少しのワクワク感もあったのだろうかとも思います。その日の荒々しい空から感じたことを、

モチーフだけではなくその空間をも使って、自分なりの表現で思いっきり形にしていったのです。

どの作品にもその子なりの表現があり、その表現の中にはたくさんのイメージや感情が詰まっています。

作品の表面だけを見るのではつい見落としてしまいますが、

その子の生み出した表現を「どうしてだろう?」とじっくり深く見つめることで、色や形、作る過程でのすべての表現方法に、

かけがえのない意味があることに気付かされるのです。

臆することなく自由に力強く自分を表現する子もいれば、自分をさらけ出すことに照れがあり目立たずに表現する子、

表現することが苦手な子もいます。また子どもたち一人ひとり、今までの経験も違えばその感じ取り方も違うように、

表現力にも一人ひとり違った個性があり個人差があります。

みんな一斉に同じモチーフを描くにしても小さく描く子もいます。

こいのぼりをテーマに描く時間の中で、ある女の子は大きな画用紙の中に小さくぽつんと描きました。

大人は大きく子どもらしい表現に目を奪われ評価をしてしまいますが、

子どもの表現にはどれも意味があり、表面だけを見て判断することはできません。

聞いてみると、なんとその女の子は小さく描くことで画用紙の余白にどこまでも広がる大空と、

こいのぼりが一匹で悠々と泳ぐ勇敢さと風の流れを表現したかったのです。

一人ひとりの違いを認め、その子の個性あふれる表現の豊かさに気付いてあげるあたたかい環境があれば、

子どもたちは臆することなく、さらに自分らしい表現を満足しながら発揮し続けられるはずなのです。

ものづくりの活動の中で、子どもたちは日々たくさんのことを感じ取り、

イメージしたことを堂々とその子なりの表現で作り上げていきます。それはその日の気分や心の状態、

そのときその瞬間のひらめきで常に変化していきますので、ある一つの表現だけを見て何かを基準にし、

大人の感覚や価値観で「この表現はこうだ」「この子はこういう子だ」と判断するのはとても危険なことです。

大人には理解できない表現の連続ですが、その子にしかできない、

そのときにしかできない個性あふれる表現が生まれる過程を一緒に辿り、しっかりと耳を傾けて共感してあげることは、

子どもたち一人ひとりをかけがえのない存在として大切に見つめていくことなのです。