製造業としてのクラフトビールってどういうこと?

製造業としてのクラフトビール 

クラフトビールを造って販売するということは、基本的に製造業のビジネスです。

ビール工場といえば大手メーカーのビール工場の巨大な設備、敷地を想像される方がほとんどだと思います。

ビールという製品はやはり規模のメリットがとても大きく、装置産業として成り立ってきました。

1994 年の規制緩和で年間の最低製造数量が2,000KLから60KLに下がったことで、

小規模でもビール製造業に参入できるようになりましたが、基本的には大きな設備で一度に大量に生産するほうが収益が上がる

ビジネスであることに変わりはありません。現在の国内のクラフトビールを造る小規模メーカーは、

大小さまざまな規模の設備がありますが、だいたい1回の製造で1,000 ~ 2,000L を製造するところが多いようです。

それでも大手ビールメーカーはさらにその何十倍以上の規模で製造するわけですから、

クラフトビールの小規模メーカーが生産性で大手ビールと闘うことは到底不可能です。

これは、原料の仕入の面でも同じことで、規模のメリットがさらに重要になってきます。

また、ビールには製造してパッケージングした後の販路、流通にももちろん課題があります。

大手メーカーのビールは発酵後の酵母を除去するマイクロフィルターろ過や加熱殺菌して

パッケージングする設備で処理してあるため常温流通ができるのですが、

小規模メーカーにはそのような処理ができる設備を所有するところはほとんどなく、

小規模メーカーのクラフトビールは基本的に要冷蔵のデリケートな商品です。

スーパーやコンビニに大量に納品、陳列される常温流通の大手メーカーのビールのイメージでは、

ビールは工業製品のようなものと認識されているかもしれません。

実際には、ビールは「生鮮食品」です。

ビールは、大麦やホップという農作物を原料にビール酵母という生き物の活動をコントロールすることで製造されますから、

出来上がったビールも本来とてもデリケートなものなのです。

クラフトビールは高品質であることが付加価値ですから、直射日光や温度差によって品質劣化することは絶対に避ける必要があります。

そのため冷蔵輸送や小ロットでの流通が必要となり、どうしても高コストになります。

ですから、クラフトビールが大手メーカーのビールに対して高価格になるのは致し方ないと言えます。

お酒には酒税という税金がかかっていて、日本のビールは量に対して一律の高い酒税がかかっています。

1L あたり220 円という世界的に見ても高額の酒税です。ビールは税金を飲んでいるようなものとよく言われますが、

大手メーカーの缶ビール1缶で80円くらいの税金がかかっています。

それでも大手メーカーのビールが350mL で200 円ちょっとで販売されているのですから、

大手メーカーのビールがいかに生産性が高いかよくわかります。

よくある大手メーカーの発泡酒や第3のビールは、麦芽比率や原料の工夫をすることで低い税率の酒税になるため、

さらに低価格で販売が可能です。

実は、当店ブリューパブテタールヴァレが取得した酒類製造免許は、ビールの製造免許ではありません。

ビールよりもさらに少量でも許認可が取得できる発泡酒の製造免許です。

年間6,000L の最低製造数量をクリアしなければなりませんが、年間60,000L のビールの10 分の1の数量で免許を取得できます。

しかし、発泡酒といっても当店の発泡酒は麦芽比率がほぼビールと同じなので、ビールと同じ酒税が適用されています。

発泡酒であれば製造量が少なくても免許は取れますが、少なければ少ないほどコストはかさみ製造量に対して効率は悪くなる上、

酒税はビールと同じ。

結局、発泡酒免許でもクラフトビールは規模を大きくして生産性を上げることで収益を上げるしかないのです。

ちなみに当店では、1回の製造で200L を造るのが精一杯です。年間で30回以上の製造を行っています。

それでなんとか年間の最低製造数量はクリアできますが、

大手メーカーが1回の製造でできる数量よりもはるかに少ないのが現状です。

普通に考えれば、当店のような規模のブリューパブが日本で製造業として

収益をあげることは現実的ではないのかもしれません。